次世代太陽電池「BCセル」におけるレーザー技術の重要性
May 14, 2025
~高効率・高美観を実現する加工技術の最前線~
はじめに
近年、太陽光発電の高効率化と製品美観へのニーズが高まる中、BC(バックコンタクト)太陽電池が大きな注目を集めています。
セル表面にグリッド(電極線)を配置せず、すべて裏面に構成を集約することで、変換効率と外観性を両立できるのが最大の魅力です。
しかし、このBC構造を量産化するには、従来以上に高精度かつ柔軟性の高いレーザー加工技術が不可欠となります。
本記事では、BC電池の技術背景とともに、レーザー技術がどのように活躍しているのかを分かりやすく解説します。
なぜBC電池が注目されているのか?
一般的なシリコン単接合型の太陽電池には、理論的に29.4%という変換効率の限界があります。
これを打破するため、PERCやTOPCon、HJTなど多くの先進構造が開発されてきました。
その中でもBCセルは、次のような独自の特徴で差別化されています:
- ✅ 全ての電極を裏面に配置 → 光の遮蔽がなく、美観性アップ
- ✅ パターン設計の自由度が高く、ハイブリッド技術との親和性が高い
- ✅ TBC(TOPCon+BC)やHBC(HJT+BC)など複合技術も登場
特にHPBC(高性能BCセル)は、PERCセルと比べて変換効率が大きく向上し、最大で24.6%に達しています。
BCセル製造におけるレーザー加工の役割
BC構造では、裏面に多数の細かい電極パターンを配置する必要があります。
このため、従来のエッチング技術やマスキング方式では対応が難しく、非接触・高精度・高速対応が可能なレーザー加工が主流となっています。
主なレーザー応用例:
- ✔ レーザー開口(膜除去)
- ✔ レーザー酸化処理
- ✔ レーザーエッチング(微細加工)
- ✔ 焼結・アニーリング
BCセルは裏面の構造が複雑なため、処理時間が長くなりがちで、装置のサイクルタイム(CT)短縮が大きな課題となっています。
そのため、より高出力・広面積対応のレーザー装置が求められているのです。
実際に使われているレーザー装置とは?
BC電池製造ラインに導入されているレーザー装置は、次のような構成で成り立っています:
- 🔹 高精度スキャン振鏡(ガルバノ):レーザーの照射位置を高速・高精度に制御
- 🔹 自動搬送システム+ビジョン認識:基板の正確な位置合わせ
- 🔹 DOE光学系やFθレンズ:大面積への均一なレーザー照射
- 🔹 除塵・集塵装置:クリーンな加工環境を確保
✅ 最新モデルでは「大スポット径 × 均一なエネルギー密度」を実現するため、レーザー光源や光学系のカスタム対応も進んでいます。
TOPCon電池でも進むレーザー応用
実はBC構造だけでなく、TOPCon電池でもレーザー技術は活用されています。
- 🔸 レーザー酸化:選択的TOPCon構造の保護層(酸化シリコン)を形成
- 🔸 レーザー減膜:背面のpoly層をパターン化し、両面感度や効率をさらに向上
これにより、TOPConラインでもさらなる性能改善と設計の自由度が期待されています。
まとめ:BC時代の製造現場にレーザーが不可欠
BC電池は今後、住宅用・商業施設用など、美観と性能の両立が求められる用途でますます普及していくと見られています。
その製造工程を支えるのが、柔軟性と高精度を両立するレーザー技術です。